こんにちは、スタッフFです。

前回の八ヶ岳の振り返りでも触れましたが、カンパニーハイクの一環だったり友人を誘ってだったりでぼちぼち山歩きをするようになりましたが、実はおひとりでというのは経験が無く、行程管理など同行者に頼りがちなこともあったのでその点での脱初心者?のつもりや、月末に控えた北岳行きに向けて身体や新調したギアの慣熟も兼ねて出掛けることにしました。

行程としては奥多摩駅を起点とし、近傍から雲取山まで続く石尾根を七ツ石小屋直上まで歩き、そこから離脱し鴨沢まで降りる、というものです。軽装かつ健脚であればボリューミーなデイハイクの範疇で収まる行程ですが、今回は鷹ノ巣の避難小屋に滞在することにしてテントなどを省いた部分に水や食料を余分に背負い、更に巻き道が実質メジャールートと化している箇所でも小ピーク全てを踏んで獲得標高と運動量を稼いでみたりしました。特に水に関しては避難小屋に湧き水があることは把握していましたが、無補給のつもりで相当量を担いだのでバッグの総重量はこれまでの山行で一番重かったです。と、ソロらしく普段の山行ではなかなか機会がない「縛り」を設けてみました。

当日は始発を繋いで奥多摩駅を6時半に行動開始です。生活圏と比べると涼しいですが、歩き出すとまだまだ暑さが響きます。そして地味に精神面を削られるのが「虫」前週の八ヶ岳が秋を感じさせるほど冷涼で、虫もかなり減っていたので感覚がズレていましたがまだまだ残暑が厳しいものです。もともと虫に集られやすい体質に加え、吹き出すように汗をかいていたのでお祭り状態。長袖長ズボンにネットを被っているので蚊やブヨは煩いだけですが、アブや蜂は洒落にならないので緊張感があります。休憩やルート確認の為に立ち止まろうものなら地獄を見るので常に緩々と動きっ放しでした。そんなことや荷重があることも踏まえ、ペースを絞りつつ同じテンポで歩き続けることを意識してみたところかえって普段より肉体的な疲労を感じることがなかったのは学びでした。

林間部を黙々と歩いていきます。小ピークは人が立ち入っていないのか、季節的に消えやすいのか踏み跡がふんわりしていますし、標識も小さいものが木に括ってあるだけです。大雑把にGPSを頼りつつ地図と目の前の地形をにらめっこして、さながらロゲイニングのような感覚でした。

鷹ノ巣の直下辺りで深く覆っていた木も途切れ、やっと景色が広がりました。どこまでも続くように山々が折り重なる奥多摩・奥秩父の、深く潜り込んで易々とは逃げられないような感覚になるのが好きですね。しばしの稜線散歩を堪能して、鷹ノ巣山頂上をしっかり踏みました。直前に石尾根から少し寄り道して踏んだ六ツ石山に続いて二つ目のしっかりとした標識のある山頂です。鷹ノ巣のアップダウンは両側とも急勾配で脛ほどに地面が掘れている場所もあったりとなかなかワイルドでした。

サクッと下山して鷹ノ巣避難小屋に到着、せっかくなので空荷で水場まで散歩です。流量も上々、汗みどろだったので冷たい水で少しばかりリセットされました。小屋にて長い停滞です。チップスとジュースでおやつというか早い夕飯の前菜から始めましょう。交流ノートが置いてありペラペラめくりつつ。行動が遅れ用途通り避難した人の安堵の様子や、通りすがりに書き残された身の上話、また付近の山によく来るのか小屋の掃除の為だけに訪れる常連の人の様子などなど、小屋に辿り着き離散していく人の様々な場面を垣間見るのは楽しいものです。最後の更新からひと月以上経っていたので、繋ぎに自分も少し書き込んでおきました。唐突な睡魔に負けて昼寝をしたり、写真を整理したり、ダラダラと過ごします。夕方からは保存しておいたラジオを娯楽にしつつ夕飯を食べたり寝落ちたり… 自分の到着直後に小屋を訪れた人と少し会話をしたのみで滞在中は独り、孤独ながら気を遣う必要もなく快適な一夜でした。

後半日は2時起床、3時半出発です。普段は2時就寝の夜型な生活を送っているので不思議な感覚ですね。途中で腹が空くのも面倒なので棒ラーメンで温まり、赤飯で腹を膨らませます。荷造りを進めるにも荷物一式が結露やらで濡れることがないのがこんなに快適だとは思いませんでした。後半日は、これまた初めて要素となるナイトハイクからスタートです。虫の音も聞こえないほどシンと静まり返っており、半ば雰囲気に飲まれながら小屋を歩き出して数十メートル、早速踏み跡を見失ったので今一度集中し直します。尾根に復帰してからは地形も単純なので、こまめにマップと照らし合わせつつ修正しながらという感じでした。ヘッドランプもテン場でトイレに行く時くらいしか使ってこなかったので用途としてしっかり使えて良かったですね。鷹ノ巣のお隣、日蔭名栗山にかけてはYAMAP曰く展望が開けてたらしいのですが真っ暗!今回の行程で一番景色が良かったのでは?という気もしますが忘れましょう。それにしても暗い夜に感じたのは、月が明るかった八ヶ岳から一週間で月が大きく欠けていたのも大きかった気がします。現象として月の満ち欠けは知っていますし、普段の生活でも視界には入っていますが街の明かりのない山中で2週連続行動していると自然と気になってくるものですね。

千本ツツジで日の出を迎えました。直前、高丸山との登り返し付近で何かの動物が目前を通り過ぎて低木が擦れる大きな音を聞き、おそらく鹿辺りだろうとは思いつつ流石に足がすくんでいたところなので、明るくなるだけで緊張も緩みますね。

尾根を離脱し七ツ石小屋で小休憩です。十数時間ぶりにヒトに遭遇できてホッとしました。鴨沢ルートはメジャールートなので多くの人とすれ違いますが、雲取や七ツ石からでも下山には早すぎる時間なので出会い頭などにしばしば驚かれました。登山口を抜け村営駐車場で終わり、と行きたいところですがバス停までもう一息です。興が乗ったのもあり、当初見込んでいたバスから早い便に間に合う事ができ、無事下山です。バスと電車に揺られ、午前中のうちに帰宅しました。単独行でのペースや技術レベルが未知数だったので安全マージンを多めに取っての山行でしたが、結果的には順調かつ余裕のある行程が組めて満足でした。山での自己完結の度合いを底上げできるよう今後も何かしらのテーマが思いつき次第、ソロハイクも挟んでいきたいですね。それでは〜